酒井 良明(ヤマシタコーポレーション)

酒井 良明(ヤマシタコーポレーション)

酒井氏は語る

酒井氏:「学生のころ、父方の祖父母と同居することになり、そこではじめて在宅サービスというものを目の当たりにしました。

私の現職である、福祉用具供給(レンタル)事業もそれらのサービスの一つです。

同居した当初、祖父は布団で寝起きしていましたが、次第に床から立ち上がるのが辛くなり、介護保険のサービスとして手すりをレンタルすることになりました。しばらくすると、手すりがあっても立ち上がるのが辛くなり、今度は電動ベッドをレンタルしました。ベッドを借りてから、祖父は寝起きが劇的に楽になったようで、「こりゃー有り難え、有り難え」と、いつも喜んでいました。

福祉用具は、その方が可能な限り自立しながら在宅生活を送るために、なくてはならない存在なのだと実感しました。

 

一方、こういう話をすると、一部の方からこう言われるんです。

「福祉用具を利用すると、逆に体が弱ってしまうのではないか。あまり道具に頼らないほうがよいのではないか。」

たしかに、そういったケースもあるかもしれません。私の祖父も、最初から手すりなど使わずに布団からの立ち上がりを続けさせていれば、筋力が維持されて、もしかしたらベッドなど必要にならなかったかもしれません。

しかし、こう考えてみてください。

 

あなたは休日に遠出をしようと思いました。例えば、山登りに行くとしましょう。そんなとき、あなたは自宅から山の麓まで歩いていきますか?

多くの方が、電車や車で近くまで移動し、そこから山登りを楽しむのではないでしょうか。なぜならば、外出の目的はあくまで「山を登ること」であって、「山まで移動すること」が目的ではないからです。

目的を果たす前に疲れてへろへろになってしまっていては、せっかくの休日も台無しです。

 

福祉用具も同じです。

ベッドがあるから室内で安楽に過ごせる。

手すりがあるから移動が楽に、かつ安全におこなえる。

車いすがあるから外出が楽になる。

「楽に」というのが重要です。なぜならば、人は楽でないことは避けようとするものだからです。

外出が「楽」でなくなれば、外出意欲もなくなってしまいますし、自宅での生活動作が「楽」でなくなれば、一日中寝て過ごすようになります。

 

福祉用具は、車や自転車、家電やパソコンと一緒で、「楽に」を得ることで生活を豊かにする便利な道具なのです。

もっといえば、自分好みの車や自転車を買うのと同じように、自分のお気に入りの車いす・シルバーカー・杖を選ぶ楽しさもありますね。

 

みなさんの生活が今よりもっと便利で豊かになるように、福祉用具供給事業者としてお役に立てればと、日々奮闘しています。