吉野 智博

吉野 智博

経歴

・居宅介護支援事業所

・訪問介護支援事業所

取締役兼ケアマネ

飲食店(喫茶よしの)経営

吉野氏は語る。

 私は21の時にヘルパーの免許を取り介護に携わってきました。この業界はヘルパーの移り変わりが多く、業界を離れる人も数多くいます。

退職理由はいくつかあると思います。

・労働の割に賃金が安い

・お年寄りが嫌いになった

・遣り甲斐を感じないなど・・・・

 私はケアマネとして現場に出ていますが、職員の退職の一番の理由としては、介護の「理想と現実」にギャップがあるからだと思っています。介護の「理想と現実」のギャップを埋めるには? 何故、理想と現実は違うのか?

「働く前に想像していたことと現実とのギャップに、耐えられなかったんだと思います。この仕事、『自分がつくしていれば、必ず感謝される』と思ってはダメなんです。
『お金を払っているのだから、お礼を言う必要はない』『あなた方(介護職員)はそれが仕事』というスタンスの人は少なくないですし、極端にいえば"召使い"のように考えている人もいます。感謝してもらえたり、家族以上の信頼関係が結べたり、ということもありますが、一方でヘルパーを見下したような目で見る利用者もいます。

また、認知症が進行している人の中には、お宅を訪問すると『何しに来たんだ!』と怒鳴るような人もいますし、『○○がない』『○○がなくなった』と、何かと泥棒扱いされるようなケースもあります。自分でやるのは絶対無理なのに、『そんなことは自分でできる!』と、断固として介護を断る人もいます。

 退職して行く人の中には、そういうことに耐えられなかった。お年寄りの身の回りの世話をしてあげれば、必ず「ありがとう」「すまないね」といったセリフが返ってくるものだと思っていたんでしょう。確かに志望理由には、『人に感謝される仕事がやりたい』というようなことが書いてありました。

ところが現実はそんなに甘くはない。最初のうちはそれを自分の能力・経験不足だと思っていても、ある時『どうやらそういう問題ではないらしい』ということに気付き、それが『お年寄りが嫌いになった』という退職理由に繋がるようです。

最初は「そういうことに耐えるのも仕事のうち」と思っていても耐えられなくなり、結局、この仕事に向いてなかったってことですね」となってしまう。

介護に限らず、相手に感謝ばかりされる仕事はない。医師や看護師も、神様のように言われる時もあれば、「なぜ救えない!医療ミスだ!」と罵倒されることもある。教師も「先生があの時、私の人生を変えてくれた」と感謝されることもあれば、理不尽に文句を言われることも。サラリーマンだって公務員だって、取引先や顧客や国民に喜ばれたり文句を言われたりしながら働いているのだ。

ただ、少なくとも言えるのは、介護の仕事ほど、赤の他人と深く関係を築ける仕事はない、ということ。世の中の大多数の人は、仕事の中で感謝の涙を流してもらったり、家族のような信頼関係を結ぶ機会などないまま、社会人経験を終えていく。

そんな介護の仕事に醍醐味を感じる若者が、今後増えていくことに期待したい。


対照的に障害の仕事は「無限の可能性」を感じる事が出来る。だからこそ「出来ない」と決めつけるのではなく、各事業所、施設、社会資源を利用し連携を図り、質の高いサービスの提供、健常者も参加出来るイベントを作っていきたい。人は「遣り甲斐と生き甲斐」が一致した時に良い物が出来ると思っています。